歴史背景が面白いB-15シビリアンモデル。【トイズマッコイ 】

私の持っている服を、服を作る立場としての視点で分析してみようと思います。服が好きな人はもちろんですが、それ以外の人にも興味を持ってもらえたら嬉しいです:)。

フライトジャケットの名作、B-15について。

そもそも服好きでも意外と知らない人が多いB-15。数あるフライトジャケットの内の1つとして今でも根強いファンがいます。MA-1は何年前かに流行ったので知っている人が多いと思いますが、B-15は簡単にいうとMA-1のお兄さんみたいな存在です。

時期としては第二次世界大戦後期から朝鮮戦争までとなります。そしてB-15は様々な改良が行われており、下記のようなバリエーションがあります。

モデル名採用開始年月
B-151944年4月-
B-15A1944年11月-
B-15B1945年8月-
B-15C1951年-
B-15D1953年-1954年

さらにmod.(modify)といって衿がリブに付け替えられたモデルが、それぞれに存在します。(例:B-15C mod.)

簡単にまとめるとこのような感じです。改良に次ぐ改良でいかに短期間の間にモデルチェンジが繰り返されてきたのかが分かると思います。そのため、B-15はヴィンテージ市場でも独特の存在感を放っています。ミントコンディション(ほぼ新品)の実物が出てくることは稀で、ファッションとして流通しているB-15はほとんどがレプリカです。

軍用ではないシビリアンモデル。

今回紹介するB-15ですが、実は上記のどれにも当てはまらないものです。

こちらが全体写真になります。

シビリアンモデル(民間モデル)という何とも聞き慣れない名前ですが、実際の歴史背景を元にトイズマッコイ社がレプリカとして2006年に販売していたものです。

実戦で使われていた正規のフライトジャケットを復刻するのではなく、民間向けにカスタマイズされたものを作るとはニッチで面白い。このような企画にワクワクします!

本物を超えたレプリカ「トイズマッコイ」。

単なるヴィンテージアイテムの復刻ではなく、機能性をも考慮したリアリティのあるアイテムを生み出す、新たな流れを作る作品と呼ぶべきプロダクツ。

上記のコンセプトで製作されており、レプリカブランドとしてはリアルマッコイズやバズリクソンズと並び最高峰に位置付けられます。嘘かまことか、「本物を超えたレプリカ」とも呼ばれています。率直に言って、ハイブランドの縫製を凌駕するほどの仕上がりです。

実際の軍用ジャケットはそんなに綺麗な縫製ではないことからその名で呼ばれるようになったのだと思います。

それではディテールを見ていきましょう!

B-15(民間モデル)のディテールについて。

民間モデルのミルスペック(タグ)。

B-15のミルスペック

JACKET INTERMEDIATE FLYING
TYPE B-15
SPECIFICATION NO.1872FS
STOCK NO. 754-28937
ORDER NO. 55-7283
ARMY AIR FORCES TYPE

AIRMAN’S TOGS
MSHILL GMT. MFG. CO.
CHICAGO, ILL. SHERMAN, TEX.

アメリカ軍の衣服や物資には必ずミルスペックという規格が存在します。その規格を満たしていないと軍に納入できません。それは当然で、戦闘中に不具合が発生する服だと命に関わりますからね。

上の画像のタグがその証明です。

民間モデルですが、どういう理由かちゃんとついています。本来であれば上のタグだけなんですが、民間モデルなので会社のタグが下に縫い付けられているようです。

謎のメーカーAirman’s Togs。

タグに記載されている「Airman’s Togs」というメーカー名ですが、ネットでいくら調べてもヒットしません。恐らく、トイズマッコイの空想上のメーカーではないでしょうか?シカゴと書いてるのでてっきり実在する会社だと思っていました。

詳しく調べるとトイズマッコイの民間モデルの製品に使用されている名称のようです。

日本の冬に最適なINTERMEDIATE JACKET。

フライトジャケットには機能、防寒性能、目的毎に主に5分類で「ゾーンタイプ」分類されています。

ゾーンタイプ対応外気温
VERY LIGHT ZONE30〜50℃
LIGHT ZONE10〜30℃
INTERMEDIATE ZONE-10〜10℃
HEAVY ZONE-30〜-10℃
VERY HEAVY ZONE-50〜-30℃

-50℃は冬のシベリア上空でしょうか。タグの上部に記載されていますが、B-15は真ん中の「INTERMEDIATE ZONE」にあたります。日本の冬にはちょうど良いです。

扱いにくいTALON製ジッパー。

タロン製のジッパー

フロントにはTALON社製のジッパーが取り付けられています。復刻版だと思うんですが、いかんせん扱いにくいです(だが、それがいい;D)。ヴィンテージ感があり、見た目はとても格好いいです。使っていくうちに塗装面が剥げて、カッパー色が見えてきます。

現代のジッパーとは異なり、シリコンを散布しても所々で引っかかります。もし、力任せに引き揚げたら確実に壊れるような感じです。引手が何回も外れたので、引手と柱を止めているピンをアロンアルファでくっ付けました。

シンプルなペンシルポケット。

B-15のペンポケット

MA-1のようにシガーポケットもなく、ペンを挿すだけの非常にシンプルなポケットです。合計で4本のペンを挿せます。本当はタクティカルペンが用途的に合うのでしょうが携帯すると捕まるので似たような下記のペンを合わせています。無骨なデザインでオススメです。

ふかふかの衿。

衿はビーバーラム(小羊の毛皮を加工したもの)で、ふかふかしてとても暖かいです。

B-15に共通していることですが、衿の裏にタブがついており立てた衿を固定することができます。

衿を立てると暖かいのですが、実際にはそこまで使うような機会はないと思います。してもらえれば分かると思いますが、異質な感じがあり首回りが窮屈です。

タブにも毛皮がカットして貼り付けられてあります。衿の隙間を完全に塞ぐための工夫です。また、衿が立ちやすいようにジグザグのステッチもかけられています。

ボタンは尿素ボタン(ユリア樹脂)が用いられています。当時はプラスチックボタンはありませんでした。

使い勝手の良いポケット。

外ポケット、内ポケットそれぞれ2つずつポケットが配置されています。外ポケットはハンドウォーマー的な役割があるのか、起毛スレキが使われています。内ポケットはハリのあるスレキです。

特徴的なのが外ポケットの袋布にユニオンチケットが縫い付けられていることです。

ユニオンチケットとは70年代以前のアメリカ製品に見られるもので、労働組合加入メーカーが製造したという意味がありました。当時の労働者(組合員)はこのユニオンチケットがついた服を買うように奨励されていたようです。

内ポケットにはトイズマッコイのタグがつけられています。

デザインが楽しいカスタムパッチ。

フライトジャケットにおいて、パッチは非常に重要なものです。

実戦で使われるジャケットは所属部隊を識別するためだけでなく、兵士の士気高揚を狙ってデザインされたものも多く個性豊かで様々な種類があります。

トイズマッコイの特徴として実際の部隊のパッチではなく、あくまでリアリティのある空想的な世界観を反映させたものがよく見られますね。このジャケットの場合は「BELL AIR CRAFT」という航空機メーカー(実在した)のサービスインストラクターという設定です。

ベルエアクラフトはそんなに有名ではないと思いますが、実は世界初の超音速水平飛行を達成した機体「X-1」の開発メーカーとして名を残しています。そして、その際に操縦していたパイロットがかの有名なチャック・イェーガー大尉という訳です。

ちょっとした蘊蓄を垂れましたが、トイズマッコイの服にはこのようなストーリーが詰まっているので調べてみると面白いです。

名作です。途中、チャックイェーガーがX-1で音速を突破する場面も見られます。

民間モデルならではの生地。

裏地はふかふかのアルパカ100%です。滑りが悪いので着るときに窮屈さを感じます。表地は通常のB-15とは異なり、畝のあるコットングログラン(N-1同様の生地)が使用されています。

色合いはオリーブドラブよりも明るく、どちらかというと黄緑に近いです。ミリタリー感が薄まっています。加えて、ベージュのリブもレアです。

また、このジャケット独特の生地使いとして腰回りと袖のリブ に近い部分に用いられている迷彩柄のパラシュートクロスがあげられます。パラシュートクロスは耐久性に優れ、滑りもよいという点で生地同士のもたつきを抑える効果があります。

平面的な袖。

B-15の袖の形状

B-15は前のモデル(B-10)に比べ、袖が立体的なパターンに変更されたことが特徴の一つです。しかし、こちらのジャケットはなぜか袖のねじれがなく平面的です。よって、運動量はあまり大きくはないです。

付属の紙タグについて。

私が心配していたファスナーの取り扱い方法もちゃんと記載されています。また、洗濯タグが服に付いていませんでしたが紙タグに詳細が記載されていました。

日本人向けのサイズ感。

今回紹介したジャケットのサイズはアメリカサイズで38です。SMLでいうとMぐらいのサイズ感でしょうか。オリジナルとは違い日本のメーカーの復刻品なので日本人向けにリサイズされています。

ただ、裏地の箇所で述べたとおり、滑りが悪いので1サイズ大きめを勧めておきます。

一応測ってみました。

肩幅48cm
身幅57cm
着丈60cm
袖丈64cm

購入を迷っている方に言いたいのは、基本的にトイズマッコイの商品は復刻はしません。なので、一度売り切れたら同じモデルはなかなか手に入らないので気に入った商品があれば購入することをオススメします。

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