今回は裏地の処理についての記事です。地味な作業ですが、表地との馴染ませ方次第では着にくい服になってしまうので注意深く進めていきます。
表地を支える裏地の処理。
まず、表地と裏地は互助の関係にあります。裏地があることで着脱が容易になりますし、型崩れしにくくなります。もちろん、裏地だけでは服として成り立ちません。
その両者の潤滑油として、今回、腕が試されています。
①:みつ芯には毛芯を。

裏地の処理をする前にみつ芯を入れていきます。
通常であれば、バイアスのスレキにぐしを入れて背中心の縫い代にハ刺しで止めつけていくのですが、今回はちょっと違います。あえて、前芯に使った弾力のある毛芯を流用しました。
- 首回りの安定感が増す
- ウールとのなじみが良い
- 型崩れしにくい
一番重さが掛かる場所だからこそ、それを支える骨組みがしっかりしていないといけません。
②:ゆとりを大事にしたしつけ止め。

次に裏地をしつけ糸で固定していきます。裏地は裁断の段階でかなり大きめにカットしたので、本来の適当な分量を割り出すための作業です。しつけ糸は最後の仕上げまで抜きません。
しつけをする順番が実は大事で、どのようにして裏地のゆとりを入れていくか考えながら行います。
- ウエストラインに沿ってしつけ
- 〃から5cm上に0.5cmのゆとり分を確保
- 〃から衿ぐりに向かって斜めじつけ
- 〃から5cm下に0.5cmのゆとり分を確保
- 〃から裾の6cm手前まで斜めじつけ
- 前身頃のしつけから続けて、衿ぐりのした7cmを通るようになだらかにしつけ
- 背中下部に裾上げの邪魔にならないよう四角形にしつけ
斜めじつけとは2枚の布がずれないように糸を斜めに渡してかけるしつけで、ある程度広い幅を固定するときに用います。このときのポイントは引っ張らずに上から軽く抑えるように裏地を扱うことです。ゆとり分が多いのは別にいいですが、足りなくなるのは表地に響くので困ります。
ここまで終わったら裏返してみて、表地がよれていないか確認。
③:ひたすら裏地をまつる。

次は裏地の裁ち端を折り込んで、表地に止めつけていくいきます。集中力が必要な作業。裏地を綺麗に真っ直ぐ折るためにはヘラを使うのがコツです。アイロンだけで折り曲げるとどうしても歪な直線になってしまうので。。
また、裏裾を処理するときはアイロンはかけません。なぜなら、アイロンをかけると奥まつりがしにくくなるからです。
ここからは単純な作業で、裏布の出来上り位置に裏布の端を合わせてしつけで止めます。その後はひたすら絹ミシン糸でまつっていきます。
- 裏裾はゆるく奥まつり(表面に糸が見えない)
- 最初と最後は出来上りの位置をまつる
- サイドベンツ持ち出し部分は身頃の表面まで通してまつる
これで全部の裏布の処理が終わったわけではないですが、ひとまず落ち着きました。ここまで終わるとほっとします。裏布の裁ち端からほつれた糸は厄介ですからね。
次回は、肩入れと衿の処理をしていきます。
続く。