【製作日記2.3】機械では作れない「もみ玉縁」ポケット作り。【№10】

製作日記2のまとめ

前回は表地のダーツを縫いましたが、今回はその裏、見返しのポケットを作っていきます。ポケット作りは普段あまり見れない工程ですが、こういう作り方もあるということで見てもらえればと思います。

いかに細いポケットを作れるか。

このジャケットのポケットは2つのみです。しかも、それは内ポケットにあるので外からは見えない仕様となっています。コンゴのサプールのように自分から裏地を見せびらかすのでない限り、誰の目からも触れられることのない寂しい存在がこの内ポケット。

しかし、スーツの型は長年の歴史の中でビジネスマナーと共にある程度決まっているので、なかなか大っぴらに手を加えにくいのが実情ではないでしょうか。個性を出すならこの見えない部分にこそ、裏勝り的にこだわるべきだと思います。

今回は何度かこのブログでも登場しているもみ玉縁という種類のポケットを作っていきます。

機械ではできないのと、手作業でやるにしても手間がかかるので市販の服には99.9%見られません。案外知られていないかもしれないので少し詳しく見ていきます。

①:ミシンが落ちるくらいに。

もみ玉縁ポケットの口布

口布(ポケットの口の部分)は裏地を使います。裏地を使った方が薄く仕上がるので内ポケットには裏地が使われることが多いです。特にもみ玉の場合は、裏地のような薄い生地でないと後々困ったことになります。まあ、分厚い布で試したことがないので確実には言えませんが、イメージはできますよね。

それで、それぞれの口布を折り曲げて突き合わせにし、そのきわをミシンで縫います。このとき大事なのが針が落ちるか落ちないかのギリギリを縫うということです(1mm以内が理想)。この縫い線が歪んでしまうとポケット自体も直線ではなくいびつな形になってしまいます。

写真にはありませんが、縫い終わったら慎重にポケット口に切り込みを入れて口布を裏に返します。切るときにロータリーカッターだと誤って口布を切ってしまうかもしれないので、ハサミを使う方が安全です。

口布を返す際にアイロンをかけるだけでは綺麗に返らないので手で口布を揉み込みながら整えます。これがもみ玉縁と呼ばれる所以(ゆえん)です。

②:向こう布の必要性とは。

もみ玉縁ポケットの向こう布

次は向こう布に袋布を縫い付けます。ポケット口(口布)の向こうに見えるので「向こう」布です。

ナナコ織り|綿100%|袋地|日本製

ポケットの中身の生地が見えてもおかしくないように、基本的にポケットの周りの生地と内側の生地を同じにしておきます。内ポケットの向こう布は見えない箇所になりますが、胸の厚みを出すためにも向こう布は表地を使いました。

デザインポイントとして、ミミ(生地の端)に文字が織られていたので使ってみました。言われないと見ないであろうところに、こういったギミックを隠してみるのは楽しいです。

ただ見た目だけでなく、この箇所にミミを使うのは非常に合理的であると思います。というのも、ミミはほつれないので裁ち端の処理をする必要がありません。その分、薄く仕上げることができますし、何より処理がないので楽です。

通常はロックミシンかパイピング、または三つ折り縫いです。お手持ちの服に付いているポケットがどのように処理されているか興味があれば覗いてみてください。

ミミは基本的に捨てられる存在ですが、モッタイナイの精神で使い方を変えれば様々なところに活用できます。例えば、ウエストベルト、直線の縫い代、靴ずれなどに。注意点として、ミミは歪んでいることが多いので長めの使い方はしないほうが無難です。

③:袋布とそれを支える力布。

もみ玉縁ポケットの袋布

次に2枚の袋布を重ねて縫い合わせて1枚の袋にしていきます。特に注意することはありません。

ポケットと一緒に縫われているのはスレキをカットした力布(ストレートテープ)です。これを袖と一緒に袖下に縫い付けます。この力布があることにより、内ポケットに物を入れても袖下で支えるため、ジャケット全体のシルエットが崩れにくくなります

スレキ|綿100%|生地幅102cm|日本製

④:手間はかかるが「裏地あとのせ」。

裏地あとのせ

まずは裏地を見返しに乗せて縦方向のゆとりを取りつつ、しつけ止めをしていきます(右側)。そして、折り目のきわを裏地と同色の絹ミシン糸でまつっていきます(左側)。

中縫いをして裏地と見返しを縫い合わせる方法もありますが、今回は「裏地あとのせ」仕様です。

ただ一点、正式な裏地あとのせは見返し据えの後にするそうなのでこれはちょっと違うかもしれません、オリジナルです。なぜ見返し据えの後に裏地を乗せるのが良いのかは考えてみてください。

裏地あとのせをするメリット
  • 裏地の交換がしやすい
  • 細いお台場を作れる
  • ハンドメイド感が出る
  • 鋭角のデザインも可能

デメリットはとにかく時間がかかることです。さらに裏地にはプリーツクンニョ(三角形状の布、後で下に切り込みを入れて前肩処理をする)が入れてあります。どちらも肩が前方に出やすくするためのものです。

⑤:ヘタウマを目指した星止め。

もみ玉縁ポケット

最後に裏地の際に1針ずつ丁寧に、絹縫い糸を使って星止めをしていきます。

既製服の場合は大抵はAMFステッチ(American Machine and Foundry)というものが入っています。星止め風ステッチと言ってもいいかもしれません、手縫いの星止めに似ています。

見分けるのは簡単で、AMFステッチは綺麗すぎて何だか味気ない感じがします。対して、手縫いのステッチは不揃いで緩めにとめてあります。この緩さが重要です。

ヘタウマという言葉が以前ありましたが、それに近いような気がしています。

これで内ポケット作りは完了です。次回はジャケットの行方を左右する芯据えに入っていきます。

続く。

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