前回は材料の調達から裁断までをまとめましたが、今回は縫製が終わって納品まで完了したのでそれらの反省を含めて振り返っていきたいと思います。
変更点もあるので随時書き留めていきます。
今思い返せば、パーツごとにブログ記事を更新すればよかったと思います。作らないと分からないような縫製ポイントが結構あったんですが、あらかた忘れてしまいました。。オイ
それはそうと、縫製はイメージした形がどんどんでき上がっていくのが一種のパズルのようで楽しいですね。それを途中で中断したくない気持ちもあって一気に縫い上げてしまうことが多いような気がします。
製作時間は10時間ほどかかりました(大まかな縫製方法のイメージで縫っていくのでたまに行き詰まりますが)。
パーカー作りの概要。
- ボリュームのある袖
- ギザギザフードの仕立て方
- 縫い目線利用の箱ポケット
- シンプルなファスナー付け
- 楽しい脇入れ
- アタッチメントを使った裾リブ付け
- フード付けは二度縫う
- ニットの袖付けは簡単
- 大事な「まとめ」
全体の流れとしては、初めに細かな部品を一つの形にしていくイメージです。
この服の場合はそこまで部品数が多くないのでそうでもないですが、パーツ数が多くなればなるほど材料が無くなったり、どう縫うのか忘れてしまったりしやすいので小さい所から片付けていきます。
ここで、オーダーメイドの指示を確認しておきます。
- フードのギザギザ9本(デザイン)
- ギザギザが真後ろに1本くる
- オープンファスナー
- 切り替えはダウンのように
- ポケット深め
- フードのくりは広め(ボートネック型)
- フードの紐は太め
- ポケットは耳の真下に位置
- 起毛スウェット
- フードのギザギザは立たせる(硬め)
- ドロップショルダー
- ビッグシルエット
クライアントの方がデザイン画を描いて細かな指示までしてくれていたので作る方としては楽でした。ありがたや〜。
作る上で気をつけたことはサイズ感と裏処理です。オーダーメイドの最大の利点はやっぱりその人にあった完璧なサイズ感だと思います。
また、せっかくオーダーメイドとして作るので工場ではできないような手のかかる仕立て方をあえて選んでいます。
縫製について。
①:ボリュームのある袖。
まずは袖から縫っていきます。
デザイン画ではかなりたっぷり目のボリュームがある雰囲気だったのでいせを多めにパターンを作成して縫っていきました。可能であればタックやギャザーを入れずに済ませられるかの実験です。
- 押さえを弱くする
- ずれないようにサンドペーパーを使う
- 糸調子は緩くする
特に伸びないように縫製することが重要です。結果としてリブを付けましたが、やはりタックを入れずにボリュームのある袖口を作るのは難しそうに思いました:(。
布帛のカフスだったらかなりボリュームの出るパターンですが、ニットのリブは伸びるのでいせが解放されてしまったようです。パターン作成からのやり直し。。
リブの縫い代をテープで固定して伸びないようにすることもできますが、そうすればリブの伸縮性自体が失われ本末転倒なのでしません。
下記が2度目の袖です。1度目の袖と比べてボリュームを出せたと思います。
タックの分量が多い分、リブの縫い代処理が大変でした。倒す方向を考えて、できるだけ薄くカットしておくと後から楽。
あと、分かりにくいですが袖下縫い目とリブの縫い代はズラしてあります。それはフラットシーマではなく2本針4本糸のロックミシンで縫っており、縫い代が必然的に厚みを帯びてくるので可能な限り縫い代を薄くするためです。厚すぎると片返しし難いし、針が折れることもありますからね。
②:ギザギザフードの仕立て方。
次はフードを作っていきます。
立体感を出すためにダーツありの両面仕立てです。デザインポイントのギザギザもあります。
前回の記事に書き忘れていましたが工具を使って紐を通すためのハトメを開けます。糸で縫う方法もありますが、ニットは伸びるので金具がマスト。

12mmのハトメが手芸屋には売っていなかったのでDIYショップで購入しました。テントやビニールハウス用ですが、問題なく使用できます。
それから、ギザギザが立つように指示されていたので接着芯を貼りました。
ダンレーヌは織りですが伸びるタイプの接着芯です。他にも接着芯では編地のアピコでも大丈夫かと思います。困ったらアピコと覚えておけばOKかと。今回はアピコの手持ちがなかったのでダンレーヌにしました。
ニットは伸びるのでそれに合わせて接着芯も伸びるタイプが好ましい。
作っていて気づいたのですが、1つ1つギザギザを付けるよりも見返しとしてギザギザをつけた方が効率的かつ綺麗に仕上がるのでパターン変更しました。
厚みがあるニットなので鋭角に返すのは大変です。目打ちを駆使して何とか綺麗に返すことができました。。よく言われることですが、鋭角は1針真横に縫うことが大事です。
最後に紐を軽く留めつけていきます。そのために見返しは長めにつけました。
③:縫い目線利用の箱ポケット。
前身頃はちょっと変わった形になっています。パーカーにダウンがハイブリッドしたような感じです。そして、その切り替え線を利用して箱ポケットを縫い付けていきます。
シンサレートという生地を使用したのですが、扱いやすくオススメ。
縫製の際は革を縫うように縫い代の部分だけ薄くすれば縫いやすくなります。それをしないと縫い代が分厚すぎて後から支障が。。
縫い代にロックミシンをかけていますが、これは別にかけなくてもOKです。私は裁ち端から糸がピロピロするのが苦手なのでそれを防ぐためにかけています。
単純に糸の無駄遣いですが、ストレスを感じながら縫製するぐらいならいっそのこと綺麗にするのもアリかと思います。
切り替え線を使った箱ポケットは比較的簡単にできるので試してみる価値があるのではないでしょうか。今回は厚手の生地を使っていて、余計な厚みを加えたくなかったので向こう布は省きました。
④:シンプルなファスナー付け。

ファスナーは縫い代を折って、上からミシンで叩いています。
ririのファスナーを使用したのですが、上の写真のように端の部分がアミアミのコーティングがされています。その間を縫っていくことになるのですが、針が引っかからないか心配でした。
しかし、それは杞憂で何のストレスもなくスーっと縫うことができました。ちゃんと考えられたアミアミに感動です。
⑤:楽しい脇入れ。
前身頃と後ろ身頃を縫い合わせればもう完成した姿が見えてきます。
- ロックミシンで2枚の生地を縫い合わせてから後ろ身頃に片返し縫い
- 上からコバステッチをかける
これ脇入れは完了です。脇のついでに肩も縫い合わせます。糸の種類や工程が似ていたら同時に済ませると、糸を変える手間が省けるので効率的です。
⑥:アタッチメントを使った裾リブ付け。
リブ付けは楽しい。
リブはロックミシンで縫い付けていくのですが、アタッチメントを変えるとスムーズに綺麗な丸みのあるリブが付けられます。
衣縫人や糸取物語を使っている人であれば上記のセットがオススメです。
裾まつり用押さえとセパレート押さえはニットの縫製に必要不可欠かと。なくても縫えないことはないですが高度な腕が必要になりますし、単純に面倒くさいですよね。。
⑦:フード付けは二度縫う。
フードは表を先に縫ってから、裏の縫い代を折ってミシンで叩きました。色々と縫製方法がある中で、この方法が手間はかかりますが最も綺麗に仕上がると思います。
⑧:ニットの袖付けは簡単。
ニットの袖付けは簡単。
カーブをロックミシンで縫うのにはコツが入りますが、差動送りを上手く使えば綺麗に縫えます。
⑨:大事な「まとめ」。
最後に飛び出た糸を切って、針が残っていないかを確認すれば完成となります。ニット素材なので最後にアイロンをかけなくてもいいのが楽ですね。
あとがき。
指示通りに進めていきましたが、やはり青写真のようにはいきません。
進めていくたびにああすればよかったとか、発見が必ずあるので実際に服を作っていくことでしか服作りは上達しないのだと改めて思いました。
とはいえ、せっかくオーダーメイドで注文を頂いているので少しでもおかしい所があれば訂正するのが当然です。今回も袖やフードなどパターンから書き直してようやくイメージした形ができ上がりました。
服をお渡しする際は毎回緊張するのですが、とても喜んでもらえて作った甲斐がありました。
パターンも販売可能なので気になる方がいましたら、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください!